多胎妊娠のリスク
多胎妊娠は母体にも胎児にもリスクが大きくなります。
早産率が高く、切迫早産で入院する期間が長くなる可能性があること、帝王切開になる可能性が高いことなどを、しっかり認識する必要があります。
低出生体重児で生まれる可能性が大きく、NICUが整備された病院での分娩が必要です。
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早産
多胎妊娠(双子・三つ子)では早産がかなりの頻度でみられます。
双胎(双子)においては早産率は約50%に認められ、一人を妊娠している場合に比べて約12倍といわれます。
三胎(三つ子)では66~86%との報告があり、四胎以上であればそのほとんどが早産になります。
切迫早産と診断された時点で、安静と張り止めのお薬(子宮収縮抑制剤)が必要になります。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群の発症は双胎(双子)の場合の約2割、三胎(三つ子)の場合の約3割~4割に見られると考えられています。
治療としては、安静・食事療法・薬物療法となりますが(「妊娠高血圧症候群」のページをご参考ください)、多胎妊娠の場合降圧薬や利尿薬の安易な投与は多胎胎盤循環を悪化させる場合があるので、慎重に投与することが必要です。
貧血
貧血は、双胎(双子)の場合では約40%にみられます。
双胎妊娠の場合、母体の血液量は1人を妊娠している場合に比べて約50ml多くなるため、その結果鉄欠乏・葉酸欠乏性貧血が起こりやすくなります。
前置胎盤
多胎妊娠の場合、前置胎盤が多いとされています。
1人を妊娠している場合に比べて、双胎(双子)では2倍、三胎(三つ子)では7倍といわれています。「前置胎盤」詳細ページをご覧ください。
羊水過多症
羊水過多症も多胎妊娠では多くみられます。三胎(三つ子)では60%に見られたとの報告もあります。「羊水過多症」詳細ページをご覧ください。
前期破水
早産と最も関係が深い前期破水(妊娠早期)の頻度は、7.4%で1人を妊娠している場合に比べて約2倍という報告があります。
多胎妊娠の頻度
多胎妊娠とは双胎(双子)・三胎(3つ子)もしくはそれ以上を妊娠することです。
日本においては、155の出産に1組の双胎(双子)が出産すると言われていますが、最近では66.5の分娩に1例とする報告もあります。
これは排卵誘発剤・体外受精など不妊治療技術の向上とともにその副作用とも言える多胎妊娠の頻度が高くなっていると考えられます。
三胎については、過去15年の報告から自然妊娠による頻度は4.674~9.837の分娩に1回とかなり幅が広い結果が出ています。しかし近年不妊治療技術向上のため三胎以上の頻度も高くなっています。
四胎では自然妊娠では非常にまれです。1900年~1952年までに48例の自然妊娠による四胎を報告されています。
最近の四胎以上の報告も多くなっていますが、ほとんどが排卵誘発剤の使用と体外受精胚移植などの不妊治療によるものです。
大変興味深いことですが、自然妊娠による多胎妊娠の頻度は人種によってかなり異なります。
多胎妊娠の頻度が高い人種は黒人で、次いで白人・黄色人種と続きます。
黒人でもナイジェリアに最も多く、ナイジェリアの中でも都市部より地方の方が多胎妊娠が多いです。
下の表を見ていただくとわかるように、どの人種も一卵性双胎(双子)の頻度はそれほど差がありませんが、黒人(特にナイジェリア)の方の二卵性双胎(双子)の頻度が、ずば抜けています。
黒人の方(特にナイジェリアの方)は子孫を残す能力が高い、ということでしょうか。
〔参考〕 各国における双胎の頻度(出産1000に対して)
国 | 一卵性 | 二卵性 | 双胎合計 |
ナイジェリア | 5.0 | 49.0 | 54.0 |
米国 黒人 | 4.7 | 11.1 | 15.8 |
白人 | 4.2 | 7.1 | 11.3 |
英国 | 3.5 | 8.8 | 12.3 |
インド(カルカッタ) | 3.3 | 8.1 | 11.4 |
日本 | 3.0 | 1.3 | 4.3 |